髪がボサボサになっている渚は、立ち止まって頭を下げた。


「まさか紫音が気付いてくれると思ってなくて……ありがとうございます。」


「渚ちゃんの目が潤んで、オロオロしてるから、何かと思ってさ?」



「本当に助かりました。
それより……紫音も私の事を、渚って呼び捨てで、呼んでもらえませんか?」


渚も呼び捨てにしてほしい。と勇気を出して言ったお願いだったが4、5秒過ぎても、紫音からの返事がない。

時が止まったように感じた渚は、慌てて早口で言った。


「あーっ!!変な意味じゃなくて。もしも良かったらって話ですよ?
別に嫌なら全然好きに呼んでもらったらいいですっ。
だって私だけ呼び捨てだったら、偉そうな気がするじゃないですか~?」


紫音を呼び捨てにしなければ、この場で抱き締められてしまう。


そんな罰があるので、呼び捨てにしている渚だが、自分だけ【渚ちゃん】なのは違和感を感じたのだ。

しかし、呼び捨てにしてほしい。

そんな言葉がどことなく告白のような気もして、あたふたしてしまった。


そういうのはスルーしてよぉ……


なんか凄く恥ずかしいんだけど……


なんて考えていると、紫音が優しく微笑んだ。


「ごめーん。ちょっとビックリしちゃった。
渚って呼んでもいいの?」


「はいっ!!」


こうして、二人は仲良くホテルへと帰っていった。