「紫音様の憧れて……」


渚が紫音の憧れていたアイドルって誰ですか?と、聞こうとすると紫音が遮った。


「ずっとその紫音様っていうのが気になってるんどけど。紫音って呼んでよ?」


「えっ……?さっきの撮影であったシーン……?」


渚はさっきのシーンの練習なのか?と、一瞬パニックになってしまう。


「し……しおん?」


「そうそう。渚ちゃんともっと仲良くなりたいから、普通に話してよ?」


台本と同じ展開に、何が起こっているのか全くわからず、渚の頭の中に『?』マークがいっぱいのまま、紫音を見上げた。


「んっ?俺が渚ちゃんと仲良くなりたいと思ったらダメかな?」


渚はブンブンと顔を横に振って、否定する。


「私も紫音様じゃなくて……し……し……紫音……さま……」


仲良くなりたいと言ってくれた紫音の気持ちが嬉しくて、私も仲良くなりたい。

そう言いたいのだが、台詞じゃないと恥ずかしくて、上手く言えない渚の顔は真っ赤になっていく。


「フフッ……照れてる顔も可愛い ……抱き締めたくなっちゃった」


渚は紫音のそんなストレートな言葉に困惑してしまう。


「ダメですよぉ。みんな見てるし……」


「誰もいなかったら、抱き締めてもいいってこと?」


渚は墓穴を掘ったことに気付いて、慌てて否定した。


「そ……そんなんじゃないですっ!!」