その時、渚はあることをひらめいた。


「涼くん。大きくなったら、一緒にテレビに出る人にならない?」


「えっ?」


「涼くん好きでしょ?マックスレンジャーとか」


マックスレンジャーとは、当時子供達の間で流行っていた5人組の戦隊シリーズ。


「うん。マックスレンジャー大好き」


「その時は馬の役じゃなくて、赤のリーダーに涼くんがなって、私がピンクになるの。
きっと涼くんのリーダーは、カッコいいだろうなぁ」


幼稚園児は単純である。

涼はその場で変身のポーズをやり始めた。


「変身っ!!マックスレンジャー!!」


パチパチと拍手して、楽しそうに笑う渚。


「マックスレンジャーになる練習のために、お馬さんの役だって頑張るんだよ?」


「わかった。マックスレンジャーになるために頑張るっ!!」


涼はこうして機嫌を直した。


渚は守ってもらうばかりだけじゃなく、涼のお姉さんの役割だってしていた。


「涼くん。大きくなったら、一緒にテレビに出る人になろうね?」


「うん。一緒に頑張ろーっ」





…………渚はこうして、初めて芸能界を意識した時の話を終えた。