「修学旅行とかじゃなくて、涼とお泊まりするのって初めてじゃない?
きっと一緒にいると、楽しいんだろうな~。って」


渚は世界の男の中で、心を開いているのは涼しかいない。


涼に気があるんだよ?


好きなんだよ?


というのを見せるような時もあるが、恥ずかしがって、そのチャンスを踏みにじるのはいつも涼の方。


「別に遊びに行くんじゃねぇだろ?」


こうして話を遮ってしまうと、少し残念そうな表情の渚はスマホを取り出して時計を見た。


「ねぇ。涼っ!!早く歩かないとバスに乗り遅れちゃうよ~。
早くに迎えに行ったのに、寝坊するってなんなのっ!!」


「はーい。夜遅くまでゲームしててすいませんでした~」


バカにされた分、言い返してやったとばかりに、満足そうな渚。

見た目は子供っぽくても、高校生の男女の精神年齢は女の方が高く、どちらかというと、渚の方がお姉さんである。

渚は何かを思い出して、後ろを振り返った。

「あっ!!そうだっ!!他の女優さん達ってオシャレだから、私も張り切って新しい靴を買ったんだよ~。可愛くない?」


よほど旅行気分で嬉しいんだろう。

渚が珍しくはしゃいで、ベージュと赤のチェックの入った可愛らしいローファーを、自慢気に見せてきた。


「はいはい。か・わ・い・い」


「何よ~。その棒読みー」


その時、後ろを向いて涼に話しかけていた渚が、人にぶつかった勢いで転んだ。


「あっ!!ごめんなさいっ!!」


地面にしりもちをついて、慌てて謝った渚がぶつかった相手を見上げると、一気に頬が赤く染まっていく。