去っていく涼と渚の背中をを見ながら、紫音が呟いた。
「2回目……」
渚を紫音の目の前から引き離したのが、バス停の前と今回で2回目という話だ。
「まぁ敵は強敵の方が、面白いって言うからな……」
小さな声でボソボソと呟いていた紫音の背中を、舞がポンッと軽く叩いた。
「ヤッホー。なんか騒がしかったみたいだけど、どうしたの~?」
休憩室で渚が見た怖い舞とは別人のような笑顔を見せている
そんな舞に対して、冷静な紫音は普段と変わらない。
「舞か?別に何もなかったよ」
この二人は高校の同級生。
人気バンドのイケメンボーカルと、人気アイドルグループのセンターの美男美女のツーショット。
二人を見てざわつくクラスメイト達に見せつけるように、紫音の腕に腕を絡めた舞は嬉しそうに話す。
「次の撮影の場所まで一緒に行こ~」
「別にいいけど。手を離せよ?重いから」
「照れてるの?別にいいじゃーんっ」
こうしてその場から立ち去っていく二人。
女子の前では怖い舞は、男の前になると、声が半オクターブ上がる女の子だった。


