渚の表情はデレデレとしているようにも見えて、苦笑いしているようにも見える。
しかし涼の初恋の幼馴染み。という色眼鏡を通すと、渚は嫌がっているように感じた。
「離せよっ!!!!渚が嫌がってんだろっ!!!!」
涼は嫉妬心全開で怒鳴り声を上げると、紫音はすぐに渚から手を離したが、悪びれた様子は全くない。
余裕の笑みさえ浮かべている紫音は、あまりの恥ずかしさで固まったままの、渚の目の前にやって来た。
そのまま顔を覗き込んでニコッと笑う。
「俺にギュってされて嫌だった?」
「…………」
何も答えられずに、困惑している渚の横から、涼が二人の間に割って入った。
「嫌に決まってんだろっ!!!
お前はまだ出番じゃないんだから、休憩室でテレビでも見てろよ」
渚の事になると、奥手で意地悪な涼がカッと熱くなる。
「こんな痴漢野郎は放っておいて、早く行くぞ?」
涼は渚の腕を掴んで、強引に引っ張って、その場を立ち去っていく。
いつもなら嬉しいはずの渚の中で、心境の変化があった。
涼が私の事で怒ってくれるのって……
守ってくれてる感じがして、好きだったのに……
今は違った……
紫音様に抱き締められた時……
嫌じゃなかったから……


