到着した日の夜。
早速、撮影が行われた。
撮影するシーンは、田舎町に引っ越してきた紫音との出会い。
夜の学校で肝試しをしていた渚達が、紫音と偶然出会うというシーン。
「これから撮影はじめまーすっ!!」
スタッフの声に、気が引き締まる渚逹。
「よろしくお願いしまーす」
3……2……1……
監督の秒読みで撮影が始まった。
ある日の夏の夜、山の中心ではゲームセンターも、カラオケも、みんなで集まるレストランもない。
田舎暮らしはすることが少ない、涼と渚、クラスメイトの男女2人の4人で肝試しをすることになった。
場所は夜9時の学校。
校門に入っていく4人の中で、張り切っているのは涼。
「夜中の音楽室に行くと、誰もいないのにピアノが鳴っていたら、どうする?」
「怖いからやめてよ……」
涼を盾にするように、渚は身を潜めながら声を震わせていた。
脅える渚を見て、涼は嬉しそうに話す。
「理科室に行ったら、ガイコツの模型が踊ってたりするんだよな?」
「踊ってたら怖くないよぉ……襲ってくるから怖いんじゃん……」
すると、そっと渚の肩に手を回した涼が、上機嫌な様子で話した。
「アハハ。やっぱり渚って可愛いな~?こんなくらいで怖いなんて」
涼の演技に、渚は心が暖かい気持ちになっていた。
本当の涼は私の事を可愛いなんて、言わないから……
台詞だとわかってても、なんか嬉しいな……


