My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~

空港からの帰り道。

夜の公園で涼と渚は、ベンチに座って話していた。


「もーっ!!紫音様にお礼をちゃんと言わなきゃダメじゃんっ」


「嫌だよ。台本にないのに、アドリブでキスするようなチャラい奴に、礼なんて言えるかって」


「まだそんなこと気にしてるの?
私の彼氏は涼なんだから、もういいじゃん」


思春期の男は、彼女の過去に嫉妬してしまうことがある。

渚の言う通り、現在好きなのは涼なのだから、別に過去にこだわらなくてもいいのに。


「別に……いや……まぁ……」


返事に困っている涼に体を向け直した渚は、手を膝に乗せて改まった様子で話す。


「教えてあげよっか?
舞さんの話じゃない、本当の紫音様とのキスシーン」


「うん……」


うん。とは言ったものの、涼は複雑な気持ちだった。


紫音が好きだったからキスをした。なんて話なら、知らない方がいいのだから。