My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~

紫音の姿が見えると、大歓声が空港の通路に響いた。


ファン達に揉みくちゃにされながら、二人の元へとやって来た紫音は、笑顔を向けて手を振った。


「よっ!!久しぶり~っ!!」


「紫音さまーっ!!いっぱいいっぱいお世話になって、ありがとうございましたーっ!!」


渚は紫音様と言っていた。


もう友達でも恋人候補でもなく、ファンに戻ったという意味合いがそこにあったのである。


紫音がそれに気付いて、ふと渚を見ると、涼と手を繋いでいるのが見えて、安堵した表情を浮かべた。


「渚ちゃん。海外で成功したら、日本で凱旋ライブやるから、その時は二人で見に来てよ」


「はーいっ!!ほらっ。涼も何か言いなよ」


「別に何も言うことねぇよ……」


「紫音様は命の恩人なんだよ?」


「別に誰も助けてくれって言ってねぇから」


そんな言い合いをしている二人を見て、紫音が笑った。


「涼らしいや。その素直じゃないとこ。素直にならないと、渚ちゃんが誰かに取られるよ~」


「うるせぇよっ!!お前のせいで死にかけたんだから、助けてもらった礼なんて、絶対に言わねぇからな?」


涼の反抗的な態度に、笑みを浮かべる紫音。


「別に礼なんて言わなくていいよ。その代わり、渚ちゃんを幸せにしないと、もう一度本気で奪いに行くからな~」


「おうっ!!渚は俺が幸せにするから。日本に帰ってきたら、その時は一緒に遊ぼうな」


「オッケーっ!!じゃあなっ」


紫音はその数分後、日本から飛び立った。


海外制覇という夢に向かって。