My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~

あまりの恥ずかしさに、困った様子で、その場をウロウロと歩いた後、何かを思い付いたように立ち止まった渚は、深呼吸してから涼の顔を覗いた。


「じゃあこちらから質問します。
川嶋 涼は、今でも藤崎 渚の事が好きですか?」


「なんだよ?その結婚式の誓いの言葉みたいなの……」


「いいじゃーんっ!!可愛いドレスを着て、結婚式する夢を見たって。
答えてくれませんか~?」


「今でも渚が好きだよ……」


渚がニコニコと幸せそうに笑って、涼に「私も涼が大好きです」と言おうとした時、背後に人の気配を感じた。


「あの……いい雰囲気の所、申し訳ないんですが、ここは集中治療室なので、静かにして頂けませんか?」


若い女性の看護師が、あまりにも賑やかなので、注意しに来たのだ。


「あっ……ごめんなさい」


渚が軽く頭を下げて謝ると、静かだった室内は騒然とする。


「えっ?目が覚めたんですか?先生ーっ!!」


看護師が慌てて他の看護師を部屋に呼び込み、医者も入ってきて涼の診察が始まると、たちまち渚の居場所はなくなってしまう。


結局、部屋の隅で涼の診察の様子を眺めている事しかできない渚は、告白しないままだったが、想像していたイメージと違う形で、二人の気持ちは伝わった。


涼はベッドの上で、渚の気持ちを知った。

渚は涼から告白してもらった。


そんな夜中の集中治療室での二人の告白のやり取りを、ずっと廊下で聞いていたのは、ライブが終わって病院に駆けつけた紫音。


「涼は目が覚めたんだ……良かった……」


それだけ言い残して、紫音は病院を後にした。