そんな話を聞きながら、隣の席に座っている渚に涼が言った。


「名前がそのままなんて、ちょっと嫌じゃねぇか?」


「んっ?別に気にならないけど。」


「だって紫音と渚が付き合うって話だろ?
渚の事が好きだよ?みたいに」


「別にいいじゃん。演技なんだから」


少し考えた渚は、クスクスと笑って言った。


「もしかしてヤキモチだったりするの?」


「バカなんじゃねぇの?」


「フフっ……涼が『渚の事が好きだよ』なんて言ったら、ちょっと気持ち悪いかも。
でも言いたくなったら、言ってもいいよぉ?ちょっとは考えてあげるから。ほんのちょっとだけどね~」


人差し指と親指の感覚を5ミリくらい空けて、ほんのちょっと。なんて言っている渚は楽しそう。


それでも涼は一切つれない返事。


「別に考える事なんて一生ないから安心しろ。
それに紫音って奴も、渚みたいなガキっぽいの好きになったりしないから」


「いちいちそんな言い方しなくても、紫音様が私を好きになるはずないじゃん」


思春期の男の子は、恋のライバルになりそうな相手を、遠ざけようとするもの。


それに対して、渚はヤキモチ妬いてるんだろうなぁ?くらいにしか受け止めていなかった。