My dear prince~初恋の幼馴染or憧れのアイドル~

渚も海外に一緒に来てほしい。

紫音にはそんな気持ちもあったが、渚はまだ現役の高校生。

日本では大成功をおさめた紫音も、海外に行くと新人扱いで、生活の保証もない。

だから渚の幸せを願って、涼と寄りを戻してほしかった紫音は、冷たくすることで、涼に泣きつくと思っていた。

しかし二人は元に戻る事も無さそうで、困っていた矢先の事故だった。


「みんな俺のお願いを聞いてくれ。
5万人で祈って欲しいんだ。
渚と俺の大切な友達の涼って奴が、意識不明になって病院で寝てるんだ。
5万人で目を覚ましてほしいってお願いすれば、神様も見てくれてないかな?って」


「紫音…………ありがと……」


「みんなっ!!せーのっで、涼の命を助けてください。って言える~?頼むよ。せーのっ!!」


涼の命を助けてくださいっ!!


5万人の声が、渚の心に響いて涙が溢れてくる。


「渚。泣くなよ~?絶対に涼は助かるから」


渚の頭をクシャクシャと撫でた紫音はそう言った後、マイクを通さずに耳元で言った。


「ごめんね……冷たくして……
俺だって渚の事が好きだったのに、突然海外に行くのが決まったから、俺も寂しくて、どうすればいいかわからなかったんだ……
涼が目を覚ましたら、絶対に幸せにしてもらってね」


渚は涙を拭うと、深く頭を下げた。


「はい……今までありがとうございました」


こんな話をしている間も、二人に笑顔はない。

まだ涼は生死をさまよっているのだから。

こうしてCYBER KINGSのライブは幕を閉じた。