そんな話をしていた時、背後から人の気配がしたので、渚と紫音が振り向くと、共演者のクラスメイトやスタッフ達が遅れてやって来た。


舞が前に出てきて、渚に頭を下げる。


「ごめんなさい……こんな事になると思わなくて……」


渚は涙を拭うと、舞を睨み付けて詰め寄った。


「涼を返してよっ!!お願い……涼をかえし……て……」


その場で崩れるように座り込んだ渚は、両手で手を覆って泣き崩れた。


しかし気の強い舞は、渚の涙を見ても動じない。


「返してって、私だけが悪いんじゃない。アンタも涼くんを振っておいて、どの立ち位置から物を言ってるの?」


渚は舞に言い返す言葉がなかった。


もしこれまで通りの仲が良かった頃の涼だったら、ここまで無理をしなかったかもしれない。


涼が言っていた、「渚に好きになってもらえる為に頑張る」の結果がこれだったのかもしれない。


そう考えると、舞を責めるのは筋が違うように思えた。