ベッドに向かって泣き崩れている渚の顔の横に、靴を並べて置いた紫音。


「渚のお気に入りの靴だからって、増水した川に入って取ってきたんだ……。
溺れて意識がなくなっても、靴を握ったまま、手を離さなかったんだ……」


「涼が……私の靴の為に……」


「靴の為じゃないよ。コイツ……」


そこまで言うと、紫音は涙を流しながら話した。


「舞にいじめられてる渚を守りたかったんだ……。
靴が捨てられた事を、渚が気付かないうちに下駄箱に返したいって……」


「そんな……」


酸素マスクをした涼を見つめて泣いている渚の肩に、紫音が手を置いた。


「人を好きになるって、凄い事だよな……。
命を賭けて守りたいって。
コイツ……すげぇな……」


「うん。涼は凄いんだよ……昔からずっと……」