2時間後。


病院の集中治療室に、ベッドで酸素マスクをつけて横たわる涼と、黙ったまま項垂れて椅子に座っている紫音がいた。


「涼……何を無茶してんだよ……渚にどう説明すればいいんだよ……」


しかし涼はピクリとも反応しないまま。


涼は激流に流された数秒後、川を塞いでいる大木に引っ掛かって、紫音が引き揚げる事に成功したが、その時から意識はないまま。


そこへ渚が慌てて集中治療室に駆け込んできた。


「涼ーーーっ!!大丈夫っ!!」


体を揺すっても起きる様子はない。


紫音は項垂れたまま、渚に向かって静かに呟いた。


「ごめん……俺のせいで……」


紫音が渚と出会わなければ、こんな事にはならなかった。


紫音が渚を無視するような事をしなければ、こんな事にはならなかった。


そういう謝罪のつもりだったが、今の状況で1から10まで説明している空気ではない。


「涼っ!!起きてよっ!!大丈夫なんだよねっ!!」


何度も体を揺すって起こそうとしている、渚を見ていた紫音が立ち上がり、渚の肩に手を置いて首を振った。


「さっき病院の先生から言われたんだ……もう起きないかも知れないって……」


「そ……そんな……」


渚は布団の中で眠る涼の胸辺りに、顔を埋めて泣き崩れた。


「やだーーーっ!!涼っ!!
死んじゃやだーーーっ!!」