涼は紫音を見ると苛立ち、まだ今の気持ちを怒鳴り続ける。


「いったい今頃なんだよっ!!
手柄を横取りでもするつもりかっ!!
渚の事を好きなふりして、いざ本気になったら捨てるくせにっ!!」


「そんなんじゃねぇよっ!!」


「じゃあなんなんだよっ!!
キスしてその気になった素人の気持ちを弄ぶってのが、芸能界で流行ってんのかっ!!」


「だからそんなんじゃねぇって!!
それより、そこから動けないんじゃないのか?ここまで来れるか?」


紫音が手を出来る限り伸ばして、涼を助けようと試みるが、涼は突き放す言葉を口にした。



「お前に助けてもらうくらいなら、このまま死んだ方がいいっつうのっ!!」


涼は手を差し出した紫音を見ると、意地になって激流の中を一歩ずつ、反対岸にある靴に向かって歩み始めた。


「涼やめろっ!!状況が変わったんだっ!!
今でも渚が好きな気持ちは変わらない。
ただ……」


「ただ……?なんだよ……渚を守ってやるのは俺だ。
渚は俺のものだーっ!!」


涼が手を伸ばして靴を掴んだ瞬間、悲鳴を上げた。


「うわーーーーーーーーーーっ!!」


「りょ……涼ーーーーっ!!」


涼は足を滑らせて、激流に流されてしまった。