竜王様のプレゼント

「まあよい。これは必要になるまで置いておく」
「……ありがとうございます」
 思っていた以上のものが返ってきて驚いたけど、今すぐどうこうって話じゃなかったから、まあよしとしましょう。
「そろそろ厨房に戻らないと、晩餐の支度が始まってしまいます。着替えて戻ってもいいですか?」
「ああ。その前に……」
「?」

 静かに立ち上がった竜王様は私の前に立つと、そっと私の耳たぶに触れました。

「ななななな?!」
 突然のことに驚いて一歩後ずさり、両耳を押さえました。
 あれ? なんだろう、固いものが当たった? イヤリングなんて持ってないし、ましてやピアスさえ開けていないのに、なぜ?
 竜王様、私の耳に何をした!?
 正体を確かめようと鏡を見ると、顔を真っ赤にした私……じゃない、耳に、何か黒い物が付いていました。
 近寄ってよく見ると、それは小さな花を象った、黒いピアスでした。竜王様の瞳と、同じ色。
 今着ているドレスとよく合っていて、シックでかわいいんですが……これを竜王様が私の耳に付けたってこと?
「これは……?」
「それも、ライラに。その石は、王家の者しか身につけることが許されていないものだ」
「ええ……」
 私、王家の者じゃありませんよ。竜王様、外堀埋めにかかってきてる。
 鏡を見てボーゼンとしている私をくるりと回し、自分の方に向けた竜王様は、どんどん私に顔を寄せてきて……近い近い!! 美形とこんな近距離接近したことないから心臓がもたないっ!

 パニックかつ心臓バックンバックンで固まっていたら、耳に柔らかい感触が。

 耳たぶに、口付け? 
 へなへな……と足の力が抜けてその場に崩れ落ちそうになったけど、そこは竜王様がしっかり抱きとめてくれました。え、死ぬる。キュン死、決定。
「余の魔力を石に込めた。いつでもライラを守ってくれるぞ」
「は……はひ」

 いやもうすでに瀕死なんですけど!! 今すぐ助けてピアス様〜!!