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あの日、「療養」から戻った小さな弟を張った手のひらが、じんじんと痛んだ。
アルバートはもっと痛かっただろうに、目を真ん丸にしただけでちっとも泣きはしなかった。
『アル』
そう呼ばれるのも、本音をいえば悲しかったけれど。
嫌そうに、辛そうに「兄上」と呼ばれるよりは幾らかましだった。
『ロイ』
その名前にも大分慣れてきた頃。
彼を連れて王の間へと向かった。
『入ってもいいの? 』
『……ああ』
何を学んできたのか、城に戻った彼は落ち着き大きく成長していた。
それを知ってか知らずか、はたまたキースが根回しをしたのか――城内も見る限りは平穏を取り戻している。
再び、見せかけの平和そのもの。
『座れ』
哀れにしか見えない王座を顎でしゃくり、ロイに告げた。
『えっ!? 』
びっくりして固まる弟に、笑みがこぼれる。
やはり、歳が離れている分仕草が幼く、可愛いものだ。
笑ったのが気に食わなかったのか、彼は少しムッとして――その勢いで腰を下ろす。
『どうだ? 』
感想は分かっていた。
ロイならきっと、自分と同じことを感じるだろう。
思った通り、彼は暫しきょろきょろした後、真顔でじっと見下ろして言ったのだ。
『どうって……ただの椅子だ』



