「たっぷり、幸せにしてもらえ」


そうしたら、この高く澄んだ青色を嬉しいと思えるから。
あの辛かった赤色が、いつか愛しいと思えるように。


(……幸せに、ジェイダ)


ちょんと唇を頬に当てる。
すぐに離れたが、彼女は目をまん丸に開いていた。

ああ、見覚えがある。
やっぱり、あの小さな妹だ。


「……っ、ちょっと……!? 」


物思いに耽る間もなく、ロイが庇うようにジェイダを後ろに隠してしまった。


「レジー……? ま、まさか……だよね……? 」


頬を引きつらせるロイに吹き出しそうになるが、何とか我慢する。


「だったら、どうする? 」


試すように眉を上げれば、


「どうもこうもないよ。即刻、接触禁止……!! っていうか、僕のだって言ったじゃないか」


随分と可愛い反応が返ってきた。
今度こそ堪えきれず、くくっと笑う。


「んな訳ないだろ、ばーか」


だから、レジーも子供っぽく言ってみせる。
昔、あの森で遊んだ時のように。


「もう……そうでした。レジーはそうやって、僕を苛めてた」

「そう言うお前は、生意気なチビだった。けど……」


小さくて体力もない、けれども口は達者なお坊っちゃん。


「約束、守れよ。……お前は口だけじゃないって知ってるから」


ロイは実現してきた。
きっと、これからも。


「……もちろん」


幸せにすると言ったなら、必ずそうする。
ジェイダだって同じはず。
だから――二人で末長く幸せになるに決まっているのだ。