「祈り子を捕らえよ」


王が短絡的な決断を下すまで、時間はかからなかった。
捕われれば、いつまで祈る?
もちろん、雨が降るまで。



―――降らなければ?


あの時、何故駆けたのか。
結果的に、アルバートが逢う方が早かったが。
もし、先にジェイダを見つけていたなら……。


何度、不毛なことを考えたかしれない。
面白く、不思議な存在だが、恋愛感情は皆無だ。
とはいえ、やはりどこかで悔しかったのだろう。


あの賭けは、キャシディにとっても本意ではなかった。
言いだした以上、今更忘れてくれなどと言うつもりはない。
言葉は時に、剣よりも身も心も深くえぐるものだ。


(……アルバート。一体、何を企んでいる? )


彼の態度は、いつもと変わらず飄々としていた。
あの森で偶然出逢い、加えて突然恋に落ちるはずもない。
父の命もあり出向いた先にいたのはやっぱり普通の女で、彼がわざわざ危険を犯してまで手を出す理由がないではないか。


(相変わらず、よく分からない男だ)


アルバートは不気味だ。
ただひとつ言えるのは、この軽い口調や佇まいはポーズにすぎないということだ。

ジェイダの様子はというと、明らかに「連れられてきたものの、訳が分からない」といった様子。
美形の王子様に言い寄られたからといって、コロリと落ちた訳ではないようだが。