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『忌々しい。まだ雨は降らないのか』


窓から強い太陽を恨めしそうに睨み、父は言った。


『………どうしようもないかと』


天に文句を言っても、どうにもならない。
青空は今日も澄んでおり、雲の欠片も見ることはできなかった。


『……それもこれも、あの女の……』


不穏な言葉に、耳を塞いでしまいたかった。
いや、事実そうしたのだろう。
聞こえないふりをしたのだから同罪だ。


『しかし、そうか。そろそろ、あれが育つ頃……』


祈り子。
クルルの乙女。

年頃の女性がいる家には恐怖でしかない。
女の子が生まれたら、すぐに婚約を決めてしまう親もいる。
大切な子を、捧げものなどにできるはずもないからだ。
実際、今回選ばれたのは彼女――ジェイダという、家族のいない女だった。


(……こんな普通の女なのか)


落胆ではなく、心苦しさでいっぱいだった。
初めてジェイダを見た時、父に秘密で町に下りた時――キャシディは驚愕した。

何か特技があれば許されるという意味ではないが、あまりに普通の女性である彼女に心が痛んでどうしようもなかった。