・・・



「護衛になってくれない? 」


そういう訳で、多少のわがままなら聞いてあげたいと思っていたが。


「……何とおっしゃいました? 」


それにしても唐突すぎた。


「僕の大事なひとの護衛になってほしい。男だと彼女も怖がるだろうから、その面でも君だと助かる。何より強いしね」

「奥方が決まったのですか? 」


妙だ。
じきに王となる兄のアルフレッドを差し置いて。
それほどその姫君に熱を上げているのだろうか?
そんな噂は欠片も聞いたことがないが。


「まあ、そんなとこ」


城の女たちが騒ぎそうな王子様スマイルだが、ますます怪しい。
尊敬はしているものの、だからこそ何となく分かるのだ。 


「だよね。ま、そういう感じだから、任せたいっていうのもあるからな」


疑いの眼差しに軽く息を吐くと、わざと声を大きくして言った。


「綺麗なお姉さんなのに、すごいな。ねえ、もっと近くで見せてよ」


はしゃいだ少年のような、ともすればまるで口説いているようにも見えるだろう。
その一声で、皆、興味津々でこちらを見ている。
それもそのはず、大女と女顔の王子様の組み合わせだ。


「アルバート様、何を……」

「……ここじゃ何だから」


そう言われ、引きずられる。


(妙なことになった……)


少なくとも、根も葉も無い噂が飛び交うことだけは避けられそうもない。