君色を探して


祈り子。クルルの乙女。
そんな存在を知っていたはずなのに、何故詳しく解ろうとはしなかったのか。


(有無を言わさず押しつけて、その子の人生は見て見ぬふりか)


名前はおろか、顔も知らない女の子。
彼女を思うと心がモヤモヤ、チクチクし――どこか親しみを覚えた。


(勝手に役目を与えられるなんて)


僕と同じだ――とでも言うつもりか。
彼女の気持ちは、きっと彼女しか分からない。
それでも、親近感が沸くのを隠せなかった。


《……ねえ、聞いてる? いろいろ大事なこと、話しておきたいんだけど》


もし会えたら――優しくしてあげたい。
恐らく憔悴している彼女を助け、話し合えたら。
もしかして、お互いにとっての打開策を見つけ、改善できるのではないだろうか。


……と思っていたのに。


(ぐっ……何でこんなことになったんだろ……)


やっと、その彼女に逢えたと思ったら、ロイは全速力で城内を走っていた。
否、正確には追いかけていたのだ。
少し前をこれまた全力で駆ける女性――ジェイダを。

あの森で出逢った彼女は、内気そうで平凡な――けれど、見たこともないくらい自然体の女の子だった。
今まで接したことのないタイプの女性に、実は好感をもったのだが。
それがガラガラと音を立てて崩れ去るほど、今のこの状況は理解できない。


『あぁぁ、もう……!! 』


とはいえ、一応こっちは男の足。
やや荒く彼女の手首を掴んだ時には、ジェイダの脱げかけた服は床へ落ちる寸前と言ってもいいくらいの有様だった。

痛かったのか、さすがに苛ついてしまった表情に怯えたのか。
ジェイダの体が少し強張る。


(……あ)


細い手首、頼りない腕。
逃げ回ったのと、急いで服を被ったせいで乱れた黒髪。
つい彼女の全身を見下ろすと、ジェイダもようやく頬を染めた。


(拐われたも同然だったんだ。何も知らない女の子が)


逃げたくなって当たり前だ。
平和に過ごしていただろうに、ただリスを追って森に迷いこんだだけで連れ去られて。


(……ごめん。いつかきっと、帰してあげるから)


そう、ジェイダは帰るのだ。
それまでに、少しは仲良くなれるだろうか。
どうやら自分は、彼女の嫌いな類いの男のようだけれども。