それはもはや、愛だの恋だのという言葉の枠には収まりきらないモノなのでは?

「っ!」
「……何だ? どうかし」
「なんっ、でも、ない! です!」

 え待って私、めちゃくちゃ愛されてない?
 それを思って、脳みそがそれを咀嚼(そしゃく)した瞬間、一気に顔に熱が集まった。
 絶対、今、顔、赤い。
 自覚しようとも、顔の色は、己の意思ではどうにもできない。対面する彼からの気遣いであろう言葉へ食い気味に返事をしてから、う、ううん、と咳払いをして誤魔化した。

「……そ、それから、ええと、そうだ。家にいた方が良かったんですか? 私も、結婚したばかりのときは専業主婦になるものだとばかり思っていたんですけど、」
「なっ」
「好きにすればいい、とおっしゃられたので、」
「っく……四年前の僕を、殴りたい……!」

 ものすごく悔しそうに、机に突っ伏す彼を見て、何故か胸がきゅうんと疼いた。

「あと、休日ですけど、誘っていただいたこと、一度もありませんよ、私」
「……僕が誘ったとして、君は断らないだろう?」

 ゆっくりと持ち上がる、彼の頭と視線。
 再び互いのものがぶつかった刹那に問われ、ああ、確かにと、彼の言わんとしていることを理解した。
 確かに、彼からの誘いを断るだとか、そんな愚かなことを私はしないだろう。

「僕は、君の意思で、僕と出かけたいと、でっ、デート、したいと、思って欲しかったんだ」
「……」
「だから、待ってた。君が誘ってくれるか、もしくは、行きたいところがあるって、言ってくれるのを」
「……」
「……待つしか、でき、なかった」

 弱まっていく語尾。
 しゅん、と垂れた三角耳が彼の頭部についている。そんな幻覚が、私には見えた。