久須栗小5年2組のくすぐり物語


「きゃははっはっははああああああははhっはっはっははっはははああ!」
 すでに男子に見られていい姿ではない。
 最初は遠慮がちに触れる程度だった男子たちも、慣れてくると思い切り指を動かしてわきの下や脇腹をいたぶってくる。
 美穂は興味半分で男子を部屋に呼ぶことにしたが、まさかこんな展開になるとは思わなかった。
「やめてぇええええええええはははははっはははははははあああああはははははははきゃああああああああああああああああ!お嫁にぃいけなくなっちゃうう……」
 一葉や二花とは違い男子のくすぐりは力強く荒っぽい。くすぐったさという点では一葉たちに遠く及ばないが、男子にくすぐられているという事実に羞恥心が高まり、いっそう刺激を感じる。
「大丈夫。こんだけ可愛く笑う美穂ちゃんなら、いいお嫁さんになれるよ」
 泰典のからかいに言い返したかったが、男子4人に同時にくすぐられている美穂にはその余裕すらない。
「きゃひゃっはっははっははああああああ!ひゃはははははっはははははははあああああああああひっひゃやはははっはっははあ」
「ねぇ、どこが一番くすぐったいのぉ?」
 治樹は意地悪な質問をする。
「わきばらぁあああ!、はははははっはははははっははっはははああ!だから脇腹だけはやめてぇええええ!」
「へえ、そうなんだぁ。良いこと聞いた。みんなで脇腹をくすぐってあげよう」
 合計40本の指が美穂の弱点である脇腹に集結する。
「ははっはははははっははっはははあああははは!!無理むりぃいいいいいいいいいいひいひひっひひひいひひひひいひひひいひ!!」


「もうこんな時間か。そろそろ戻った方が良いよな」
 消灯時間10分前。美穂以外にとってはあっという間の時間が過ぎ去り、男子4人組は泰典を先頭に部屋から出ていく。
 美穂の布団だけが激しく乱れている。消灯時間になると先生が見回りに来るため、慌てて部屋を整える。

コンコン
ドアを開けると、担任の先生が見回りに来た。
「寝る準備はできてる?」
「はい。できてます」
「明日もあるから、早めに寝るんだよ」
 見回りにくる先生のテンプレみたいなセリフを残して、ドアを閉めた。
 もちろん、すぐに寝るつもりはない。

 林間学校の夜はこれから始まるのだ。