久須栗小5年2組のくすぐり物語


「きゃははっはっははああああくすぐったい」
「誰が好きなのか吐きなさ~い」
 美穂は布団に寝かされ、両手をバンザイのかたちに固定された上に三咲が乗っかっている。右脚には一葉、左脚には二花が乗っているため、抵抗しようにも両手足が全く動かせない状況である。
 そんな状況でも三人のくすぐり攻撃は容赦なく続く。
「きゃははっはっははああああ!ははっあああはっははああは!ひっひろし君っ!ひろし君ぅううう ひゃははははっはははああああああ」
 
「答えたじゃん!くふふうふひゃははははははあああああ」
「へぇ、ひろし君が好きなんだぁ」
 3人ともいったん手を止め、ようやく尋問が終わった。
「じゃあ、今からひろし君に告白してきなよ」
「えっ、や、やだよぉ」
「どうして?林間学校なんて告白のチャンスじゃん!」
「だからってぇ、恥ずかしいよ」
「そんなことないよ!そういえば、ひろし君のどういうとこが好きなの?」
 一葉はすべてを見通しているかのような意地悪な視線を向けてくる。
「えっ、そっ、それは……」
「ねぇ。本当にひろし君のことが好きなのぉ?……」
 ひろし君が好きというのは、くすぐり責めから逃げるためのでまかせだった。
「えっ、ほっ、ほんとぉ……きゃはっはっはははははっはははははっははっはははあああああははっはははっはああはhっははhっは!うそっ嘘ですっ、ごめんなさいいいいいひひいひhっひっひひひひひっひいひいh」 
 一葉の攻撃を防ごうと両手を振り回すが、すぐさま三咲にとらわれてしまう。
「嘘をついた美穂ちゃんにはお仕置きが必要だね」
 二花の指ががらりと空いたわきの下に入り込み、こちょこちょと動きまわる。
「きゃははっははははははははははああああ!ごめんっ、ごめんってばああああああああああああああああああああああ!ははっはははははっははっはははあ」

「ところで、本当に好きなのは誰なの?」
「そ、そんなの言えない……ひゃはははははははははははは」
 一葉の手が脇腹をもみもみし、二花の手は太ももに指の腹を当て、さわさわと動かす。
「ひゃははははははははははははっはははははははあああああ!光希君っ光希君が好きぃ……」
 くすぐりの手が止まった。
「やばっ!美穂は光希君のことが好きなんだ」
 美穂は真っ赤になった顔を両手で覆う。
 その様子を見て一葉たちはにやにや笑っている。
 今度は本当のことを言ってるのが美穂の表情から明らかである。

「ねえ。どういうとこが好きなの?」
「子供っぽくて、笑顔が可愛いところ」
 これ以上拷問されたくないので、正直に答える。
「明日、牧場の自由時間で告っちゃいなよ」
「そうだよ。みんなで応援するから」
 一葉たちに後押しされた美穂は、明日本当に告白してもいいかなと思っていた。
 
   ー告白するなら、必ず成功させようー
 
 決心すると、歯ブラシを手に洗面所に向かった。