久遠の果てで、あの約束を。

何故なら。




「それでね? その後先生が凄く怒ってさー」


一人きりのはずの昼休みなのに、隣で好き勝手に喋っている人がいるから。

「ねぇ」


「なに?」

「なに? じゃないんだけど。なんであんたがここにいる訳? 人気者さんには、他に食べる相手がいるでしょう?」


今日だけでも、色々な人と話している姿を何回も見かけた。

どうやら、朝に返事をしてしまったせいで、少なくとも嫌われてはいないと判断されてしまったらしい。こちらからしたらいい迷惑だ。


苛々しているのを隠さずに伝えると、向こうはきょとんとした顔でこう答えた。


「俺には他に食べる人がいるけど、そっちはぼっちご飯じゃん」


「…………」

ここまでストレートに言われると、かなりむっとくるのが人間の性。


「ごちそうさま」

お弁当箱を手に立ち上がろうとすると、いきなり腕を掴まれた。


「待ってよ」

「待たない。手離して」

「まだ大事なこと話してない」

「だけどもう食べ終わったから、それを聞く必要はない。そもそも、一緒に食べる約束をした覚えもない」


だから、手、離してくれる?



嫌味ったらしくつけ足すと、なにが面白かったのか、彼はくつくつと笑い出した。


「冷たいなぁ。これでも一応は病人なんだから、もうちょっと優しくしてくれたっていいのに」

「は?」


意味がわからない。私がそう思っていることを見透かしているとでも言いたげな顔をして、彼はとんでもない爆弾を投下した。




「俺ね、あと一年しか生きられないんだ。」