想像通り、渚は話しかけてこなかった。



お互い目も合わせずに、その場にいないかのように扱う。


篠原にあんな偉そうなことを言っておいて、なんだこの体たらくは。

その篠原はどうやら宮野さんと上手くいったみたいで、この間一緒に帰っているところを見かけた。

直接声をかけられることはないけれど、時折こちらを窺ってくる気配がする。



いい奴だなぁと、しみじみ思う。


一番大切な人を傷つけ、自分が一番言われたくないことを言った私とは大違いだ。


黄色や白や薄紫の菊が淑やかに花を咲かせて、独特の芳香と共に秋を誘い込むにつれ、渚との溝はどんどん大きくなっていった。


無機質な日々を過ごしているうちに、もう暦の上では新しい月を迎えようとしていた。



文化祭が、近づいている。