渚に告白した宮野さんが悪いんだ。今更私に関わろうとしたお母さんが悪いんだ。それに協力しようとしているお父さんが悪いんだ。
今目の前で青ざめている渚がーー。
誰のせいでもないことを誰かのせいにして、一体なにがしたいんだろう。
ーーいや、本当は分かっている。
全部私が悪いってことも、私が全ての元凶だってことも。
全部全部、分かっているっ。
大きく息を吸い込んで、お腹と足に力を込める。この先私が言おうとしているのは、絶対に言ってはいけない言葉だ。
だけど、もう正常な判断なんてできない。
「もういい」
言った途端、視界と足元がぐらりと歪んだ。
踵を返して歩き出す。さっきまで押さえ込んでいた雫が熱くこぼれて、輪郭の滲んだ彼岸花がゆらゆら揺れる。
まるで悲鳴を上げているみたい。花言葉は確か〝悲しい思い出〟。
今の私にぴったりだ。
自分で初恋を終わらせて、渚を幸せにするどころか傷つけて。
本当に、最低だ。
きっと渚は、もう二度と私に関わってこないだろう。
艶やかで切ない赤色が、やけに感傷的だった。