「顔色もよくないし、目の下のクマとか凄いことになってるよ。あんまり寝てないんじゃないの? 無理に話せとは言わないけどさ、最近ちょっと無理してない?」


どうして、どうしてそんなこと言うの。


他に好きな子がいる癖に、期待させるようなこと言わないでよ。馬鹿。


渚の純粋さと自分の醜さの差が大きすぎて、何故か怒りが湧いてきた。

我慢しろと言わばかりに、烏がけたたましく鳴き叫ぶ。きっとその烏は、夕空を伸び伸びと飛んでいるのだろう。

水色と藍色とオレンジの、変な色のグラデーション。そのぐちゃぐちゃを綺麗だと思えるのは、渚のおかげだと知っている。



「優希」



プツリと、なにかが切れた。


「…………さい」


「え?」


「うるさい」



低い優しい声が私を責めているような気がして、いやそんなことはないとわかってはいるけれど、あの一瞬で今までの想い出が、記憶が走馬灯のように駆け巡り、必死で守っていたものが一気に崩れ落ちる音がした。


やめろ。抑えろ。今それを口にしたら、後で絶対に後悔する。


けれど私は、警鐘に従えるほど大人にはなれなかった。