久遠の果てで、あの約束を。

バレた。バレてしまった。

なにか言い訳しないと。

それなのに喉がつかえて、息をすることもままならない。バクバクと心臓が暴れ回る。肺に酸素を取り込めないせいか、気を張っていないと倒れてしまいそうだ。

こうなることを、想定していなかった訳ではない。むしろ、いざというときの逃げ道は用意しておいたはずだ。


左の二の腕に爪を立てたまま荒い呼吸ばかりを繰り返す私を不審に思ったのか、渚が心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


「もしかして……、なんかあった?」


そう遠慮がちに問う声も瞳も私には優しすぎて綺麗すぎて、唇を噛んで目を逸らした。俯いた先に見える影法師が、やけに胸を焦がしてくる。



泣きたいと、そう思った。


プライドも見栄も全部捨てて、今この場で泣きたくなった。

きっと渚はなにも言わずに、頭を撫でてくれるだろう。でも、それは決して許されない。

あれだけ冷たくしておいて、そんな都合のいいことはできない。


沈黙を返答と捉えたのか、更に優しい色が滲んだ。

切なささえ帯びた声に、縋ってしまいそうになる。