久遠の果てで、あの約束を。

地獄という言葉は、この日のために作られたのかもしれない。


いつまで経っても出せない答えと、変わらず話しかけてくる渚。何故か癒えない心の傷。

寝不足から来る慢性的なストレスも相まって、もう頭痛とは友達状態だ。

いい加減どうにかしなきゃと思っている渚への態度だって、未だに素っ気ないままで。

追い詰められた時に現れるとかいう本性が、いかに最低かを思い知った。


それはさておき、いつまでも隣の席の人を避け続けていれば流石に不審がられるという訳で、ついに恐れていた事態が発生した。


九月下旬の、放課後の帰り道。

勝手に母娘再開の話を持ち出すだけ持ち出してさっさと赴任先へ帰ってしまった父への不満を抱えながら歩いていると、いきなり後ろから腕を掴まれた。

道の左右を毒々しい赤が囲んでいたから、彼岸花畑の前だったと思う。

ここまで走ってきたのか、苦しそうに息を切らしていた。


「え、なに。どうしたの?」

「どうしたのはこっちの台詞。最近、俺のこと避けてない?」


気まずいと思うより先に、動揺が頭を駆け巡る。