久遠の果てで、あの約束を。


ここ数年、祖母にも全く会っていない。



母が出て行ったのだから必然的にそうなってしまうのもあるけれど、住所はちゃんと知っているし、そう遠い場所でもない。

温厚な祖母のことは嫌いじゃない。でも、どうしても行く気にはなれなかった。


理由はふたつ。


母の身内と顔を合わせるのが気まずかったのと、祖母の家がある離島に近づきたくなかったから。


フェリーで十五分と、ターミナル駅から更に十分。

のどかで自然が多くて、古びた教会がぽつんと立っている。

あそこに行くと、嫌でも昔のことを思い出す。

名前も知らない少年と出逢った、あの日のことを思い出す。

そして、そこで交わした約束を思い出す。


それが、どうしても嫌だった。



とにかく、母のことは早めに答えを出さなくてはいけない。


もう一度会いたいという気持ちが全くない訳ではないし、戻れるなら戻りたいとも思う。

少なくとも、このままでは駄目なことだけは確かだ。


平行線のまま無理やり結論を出そうとしているうちに渚と宮野さんが登校し、気がついたときにはホームルーム終了を告げるチャイムが鳴っていた。