久遠の果てで、あの約束を。

全然眠れない夜を過ごして、ぼんやりとした状態で教室に入ると、幸か不幸か、渚も宮野さんも登校していなかった。


昨日は色々と大変だったせいか、教室がいつも通り騒がしいことに安心する。


とりあえず自分の席に座り、一人思考を巡らせた。


一晩ゆっくり考えてみても、母に会いたいか会いたくないか、その答えは出てこなかった。


記憶の底を掘り返してみても、発掘されるのはしつけに厳しかった姿や、「もういい」と言った時の冷えきった表情くらい。

もう五年以上顔を見ていないから、当然といえば当然か。


思い返してみると、母親から愛情を受けた記憶がほとんどない。


普段のよく言えば威厳がある、悪く言えば威圧的な態度に埋もれてしまった可能性も否めなくはないが、あの厳格さが行き過ぎた愛の鞭だという方は、実の娘を捨てた時点で期待していない。


それらの過去のトラウマだけでなく、あの家に行くのに抵抗があるのも、決断を渋る理由のひとつだ。