久遠の果てで、あの約束を。

「…………」

「…………」


夕焼けの名残を絡めてちらちらと金色の光を滲ませている川と、冷たい風に淋しく揺れるライムグリーンの芝生。青臭い草の香りに鼻孔がツンと刺激される、空気が白く透き通った黄昏時。

河川敷に並んで腰を下ろしたまま一言も交わそうとしない高校生の男女は、世間様から一体どう映っているのやら。

遠くから微かに、自転車の音や下校中の小学生の声が聞こえる。


「お前も振られたのか?」


先に口を開いたのは向こうからだった。


「振られたっていうか、別に告白した訳でもないし。たまたま宮野さんが渚に告白してるのを見ちゃっただけで……。えっと、し……」

「篠原。お前、俺の名前覚えてないだろ」


図星。何故バレた。


「……そっちだって、私の名前覚えてないでしょ」

私、お前っていう名前じゃないし。


「覚えてるよ。高嶺だろ? 高嶺優希」


「…………篠原は?」


多分名前の話はもう広がらないと判断したので、というよりは広げたくなかったので、ちょっとした悔しさを誤魔化すように話を戻した。


「ん。俺? 見ての通り惨敗だよ」

告白すらしてないのに振られるってのも変な話だよなぁと、こちらを見ずにしなんとかもとい篠原が笑う。



「惨敗、じゃないでしょう」