久遠の果てで、あの約束を。

「…………いいの。私は神崎くんに告白できただけで充分だから。神崎くん、幸せになってね」



そのはずなのに、宮野さんは一瞬泣きそうになったけれどすぐに笑顔でそう言って、



「ありがとう」


渚も、少し驚いた顔をした後に安心したように微笑んで。



宮野さんがとてもいい子なのが、痛いほど実感させれた。




……もう、見てられないや。



お似合いな二人に背を向けて、逆方向に走り出す。



苦しくて、悔しくて、切なくて、やっぱり妬ましいと思ってしまって。



夏休みの間、ずっと一人で考えていた。


初デートのときや、夏祭りのときのこと。



どうしてあんな気持ちになったのか、あの痛みの正体は一体なんなのか。


ここまで来て自分の気持ちがわからないほど、私は鈍くなかったみたいだ。



なんで、よりにもよって今なんだろう。


望みなんてないってわかっていたのに。



生まれて初めての失恋に、絶対に流すもんかと我慢していた涙がこぼれそうになったけれど、それが地面に落ちることはなかった。



その前に、誰かにぽんと肩を叩かれたから。



もしかしたら覗き見に気がついた渚が追いかけてきてくれたのかもと、ありえない期待を寄せつつ振り返ったが、そこに彼はいなかった。


けれど、このときの私が一番会いたかったのは、今思えばこいつだったのかもしれない。



「ちょっと話さねえか?」




無愛想にそう言ったのは、前に屋上で遭遇した、宮野さんに片想いをしているクラスメートだった。