長い長い夏休みが明け、まだ透明な日光が暑さを残す新学期初日もどうにか乗り切って、席替えでは渚と隣になった。



「隣優希かー。居眠りしたときにノート見せてくれそう」

「見せるのは別にいいけど、一ページ百円だからね」

「うっわ、お金取る気?」

「タダより高いものはないからね」


隣同士になってからは一学期よりも話す機会が増えたけれど、特にクラスメートからとやかく言われることもなかった。



そんな厳しい残暑もようやく和らいだある日、委員会が終わって鞄を取りに教室に戻ると、数名の女子がひとつの机に集まっていた。


「なにしてるの?」

「恋バナ。高嶺さんもどう?」

教室に残っていたのは夏祭りのときの女の子達で、その中には宮野さんも混じっていた。


「私、人に話せるような恋バナないから」


「またまた~。高嶺さん、最近神崎くんと噂になってるよ?」



その言葉に、意図せずとも肩がビクッと返事する。

女の子はそれを図星と見たのか、更に得意気な顔になった。



「だって神崎くんって女子を下の名前で呼ばないって有名なのに、高嶺さんだけは名前で呼んでるし、休みの日に二人で歩いてたって目撃情報もあるんだよ? 絶対なにかあるでしょ。で、結局二人は付き合ってるの? 告白はどっちから? 何処まで進んだの? キスはまだしてない?」