久遠の果てで、あの約束を。

渚、今なんて言ったの?



思考が止まるどころか、急に異空間に飛ばされたくらいの衝撃だ。

言われたことを咀嚼できずに、何度も目を瞬かせる。


「手、離したくない。このままごいい。……駄目?」



いつかのときみたいに困ったような懇願するような顔で遠慮がちに覗き込んで、甘えたような声を出して。


渚はずるい。


そうしたら私が拒めなくなること、知ってるんだ。



「駄目、じゃない……」


思いっきり突き放してやろうとか考えても、結局拒むことなんてできなくて、むしろ冷たくないその手を握り返してしまう。

ただでさえ暑かった顔は更に火照って、心臓なんかもう爆発しそうだ。


「優希」


名前を呼ばれただけなのに、どうして体はこんなにも甘く痺れるのだろう。



「最初に言えなくてごめんね。浴衣、似合ってる。凄く可愛い」



初デートのときにも言われた言葉。


そのはずなのに、あのときとは比べものにならないくらい恥ずかしくて嬉しくて、心に刺さった針の痛みも消えていく。