久遠の果てで、あの約束を。

せめて私服で来ればよかったかなと後悔しかけたとき。




「おーい、優希。聞いてる?」



「あ、ごめん。考えごとしてた。なに?」


顔の前で手を振られて我に返った。

考えていたことを悟られないように、すぐに作り笑顔を浮かべる。


「そろそろ花火が上がる時間だから、見に行こう?」

「わかった」



適当な返事をして渚の後をついて行ったけれど、周りも同じことを考えているみたいで、道はかなり混雑している。

人の群れ特有のもわっとした暑さと閉塞感に、よってしまいそうになる。



やばい、このままだとはぐれそう。


というか、確実にはぐれる。


そう思った矢先、



「ったく、ちゃんとついてきてよ? 探すの大変なんだから」


いきなり腕を引っ張られて、そのまま手を繋がれた。



「え、あ……、うん。ありがとう」


ありがとうの使い方を微妙に間違えている気がするけれど、もうそれどころじゃない。


繋いだ手から渚の熱が伝わって、それが顔に集中して。

ちくちくしていたはずの胸が、馬鹿みたいに高鳴って。


……渚、手おっきいなぁ。


ちらりとその後ろ姿を盗み見ると、林檎飴の屋台のときみたいに耳が赤くなっていた。



渚も、照れてるの……かな。




そう思うと、なんでかはわからないけれど、ほんのちょっとだけ嬉しくなった。