久遠の果てで、あの約束を。

どうしたんだろうと大きな背中の後ろから覗き見ると、思わぬものを目にした。



「恵理凄い! 次はこれ取って!」


「いいよ。他に欲しいものはある?」


「えー、じゃあ、このぬいぐるみ!」



数メートル離れた射的の屋台にいたのは、宮野さんとクラスメートの女の子達。


前に私を呼び出したのとは違う人だけど、噂好きで有名だった。

宮野さんはともかく、そういう人達にこの現場を見られると、色々と面倒なことになる。



「やっぱり、金魚すくいにしようか」


渚も同じことを考えたのか、顔を見られにくいものに変更してきた。


私だって変な噂を流されるのは嫌だし、またあんな目に遭うのはごめんだ。


それなのに胸が痛むのは、あからさまな態度を取られて傷ついたからなのか。



「兄ちゃんすげー! どうやったらそんなに取れるんだよ?」


「こういうのにはね、コツがいるんだよ」



小学生くらいの男の子と楽しそうに金魚すくいをしている姿は、なんだか遠い人みたいに見えた。




「恵里、どうしたの? ぼーっとして」



「……ううん。なんでもない」



射的の屋台から発せられた声は、喧騒に紛れて消えていく。




「あー、取った取った。俺焼き鳥食べたいんだけど、いい?」


獲得した大量の金魚をあっさりと水槽の中に返した渚は、上機嫌な声を上げた。