久遠の果てで、あの約束を。

それでも、正体不明の痛みは初めての夏祭りの前では徐々に薄れていき、着いた頃には渚を楽しませるという目的もすっかり忘れてはしゃいでいた。




「凄いよ渚! 人が沢山いる!」


「そりゃあお祭りだからね。そうだ。危ないから、はぐれないよう気をつけてね?」


「あ、林檎飴ある! ちょっと買ってくるからここで待ってて!」


「聞いてねえな……。危ないから俺も行くよ」


結局二人で、密かに食べたことがなかった林檎飴の屋台に並んだ。



「すみませーん。林檎飴ひとつください」


「はーい。……って、彼氏さんはいいの?」



予想外の言葉に、無意識に肩が跳ね上がる。


そっか。私達って、世間から見たら恋人同士に見えるんだ。この前ナンパされたときだって、似たようなこと言われたもんな。



「あ、俺はいいです」



〝彼氏さん〟という言葉に反応したのはどうやら私だけみたいで、渚の方は肯定も否定もせずに自然に受け流していた。


その温度差が、少し寂しい。


渚の姿を横目に見つつ、屋台のお姉さんにお金を渡して林檎飴を受け取った。

提灯の光を受けたそれは、瑞々しく艶めいている。