久遠の果てで、あの約束を。

宮野さんが家を出てから五分くらい経って、そろそろ出ようかなと腰を浮かせた絶妙なタイミングで、玄関先のインターホンが軽快な音を奏でた。



まさか……。いや、まさかね。


だって、迎えに来るなんて言われてないし。


ドキドキと波打つ心臓を連れてドアを開けると、なんとも言えない表情をした渚が立っていた。



「…………浴衣、着てきたんだ」

なにその間、と思いつつも口を開く。

「そりゃあ着てくるでしょ。こんな機会滅多にないし。どう? 似合う?」


せっかく着てきたんだから感想くらいは聞いておきたいし、渚なら似合ってるって言ってくれると勝手にそう信じていた。



だけど、その答えは期待とは外れていて。


「……知らなーい。俺そういうの興味無いし。ほら、さっさと行こう?」


「え、ちょ……、待ってよ馬鹿っ!」



私に背を向けて歩き出した渚を、不慣れな下駄を履いた足で追いかけるしかなかった。



……そういうの興味無い、か。



何故かはわからないけれど、ちょっとだけ胸がちくっとした。