久遠の果てで、あの約束を。

「宮野さん」



焦げ茶色の髪を緩く巻いて、可愛らしいベージュのキャミワンピに身を包んだ宮野さんが、「久しぶり」と小動物みたいにはにかんだ。


なんだかんだで夏休みに入ってから一度も会っていなかった私服姿の彼女は、学校で見たときと雰囲気が少し違っていた。


「こんなところで偶然だね。優希ちゃんも浴衣、買いに来たの?」

「うん、だけどどれにすればいいかわからなくて」

「そっかぁ」


宮野さんは少し店内をうろついてから、白地に濃いクリーム色の花が描かれた浴衣と、黒いレースの帯を持ってきた。


「これとかどう?」


「可愛い、けど。ちょっと大人っぽ過ぎない?」

どちらかというと、女子高生よりも女子大生もっと大人の女の人が選びそうなデザインだ。



「確かにそうかもしれないけど、優希ちゃん美人だし、こういうお洒落なの似合うと思う」


「いや、でも……」


似合う似合わないの問題じゃなくて、これを着て渚の前に出るのがちょっと、ね。


なんというか、照れくさい。


「大丈夫、当日は私が可愛くしてあげるから!」

「え、いいの? ありがとう……。じゃなくて、え?」

「店員さーん。これお願いします」

「いや、ちょっと待っ……、うわ高っ」


値段を見て思わず目が飛び出そうになってしまった。


あれよあれよとことが進み、忙しない夏休みの一週間は、浴衣の着つけ練習に追われることになった。