久遠の果てで、あの約束を。

「そういえば、浴衣持ってなかった」




半強制的に約束を取りつけた帰り道で、いきなりそれを思い出した。


浴衣どころか、今まで一度も夏祭りに行ったことがない。


親が許してくれなかったし、悲しいことに誘ってくれる人もいなかった。


考えなしに誘ったのは少し軽率だったかもと軽く反省し、目的地を帰るべく本来なら真っ直ぐ進むべき道を右に曲がる。



この先に、浴衣を売っているお店がある。



別に普段着でも問題はないのだろうけれど、
せっかくだし、一度くらいは着てみたい。


そう思うのは初めての夏祭りが楽しみだからだと、信じるしか他がなかった。