久遠の果てで、あの約束を。

回された腕が胸に伸びる寸前に、渚は戻ってきた。



「前から思ってたけど、渚っていっつもタイミングいいよね」


個人的にはナンパされる前に戻ってきて欲しかったけれど。


「ちっ、彼氏持ちかよ」

ナンパ男は、舌打ちをして帰っていった。ぱんぱんと、触られた箇所を軽く払う。あ、彼氏じゃないって言うの忘れた。


「ちょっと来るのが遅かったかな」

渚が、整った顔に苦笑いを浮かべる。

「いや別にいいけどさ。ところで、なに買ってきたの?」

「あ、そうだ忘れてた。……はい、あげる」


手出して? と言われたので素直に手を出すと、なにかを上に乗せられた。



……白い小さな、箱?



「え、あ、ありがとう……。開けていい?」

「いいよ」


了承を得たので遠慮なく開けてみるとそこには、華奢なネックレスが入っていた。

細い銀色のチェーンに繋がれた貝殻の中に、ピンクとブルーが混じり合い、時折パープルの影を透かす天然石が閉じ込められていて、その横には小さな丸い白珊瑚がぶら下がっている。

ブルーピンクの優しい色が、夜明けの空みたいに見えた。


「え、綺麗……。ありがとうっ」

「どういたしまして。じゃあ、行こっか」


胸の中がいっぱいになって、ちょっとだけ泣きそうになったのは、私だけの秘密にしておきたい。