それから本屋に行ったり昼食を取ったりと、多少の胸の痛みを伴いつつも楽しい時間を過ごした。
そして、
「遅い……」
渚に「ちょっと買いたいものがあるからここで待ってて」と言われたのが約三十分前のこと。
待つことには慣れているのでそれほど苦痛ではないけれど、一体なにを買いに行っているのやら。
というか、意外と買い物長いタイプなんだ。
「そこのオネーサン」
渚が戻ってくるのをボーッとしながら待っていると、真ん前から自分のではない声がした。いつの間に現れたのか、見知らぬ男性が立っている。
そこのオネーサン。というのが私だと気づくのに、少し時間がかかってしまった。
「え、私ですか?」
勘違いだと恥ずかしいので、一応確認を取ってみる。
「他に誰がいんの」
小馬鹿にしたように笑う、大学生くらいの男の人。
染めた髪にぎらつくピアスと、完全に私の偏見だけど、どう頑張ってもチャラ男にしか見えない。
「一人? 今から俺と遊ばない?」
なんと、人生初のナンパをされてしまった。
「いや、待っている人がいるので」
「でも今は1人じゃん。1人で突っ立って待ってるよりも、俺といる方が楽しいよー」
ナンパ男が肩に腕を回してくる。振り払おうとしても、力が強くてびくともしない。怖いというよりは気持ち悪い。ぞわりと、悪寒と共に鳥肌が立った。
「お待たせ……って、なにこの人」

