久遠の果てで、あの約束を。

「馬鹿、そんなんじゃ今月中に全部終わらせるなんて夢のまた夢だよ」



〝宿題は七月中に全部終わらせて、八月は思いっきり遊ぶ〟


そのためだけに、彼は勉強漬けの夏休み前半を送っている。

どうして私がそれに付き合っているのかは、正直自分でもよくわからない。

どちらかというと最後の日まで溜め込んで徹夜していそうなタイプに見えていたので、なんというか、意外だった。


「その気持ちはわかるけど、一日くらい気分転換してもバチは当たらないと思うよ」


それを口にすると渚は少し考え込む素振りを見せてから、子供みたいに目を輝かせた。

「優希、明日ってなんか予定ある?」

「特にないけど……、なんで?」

きらりと、瞳が更に輝きを増す。

「二人でどっか行こうよ!」


「…………」

これ、何処から突っ込めばいいんだろう。


「あのさ」

「うん」

「私達って、夏休みが始まってから毎日二人で勉強してるじゃないですか?」

「そうだね」

「それ、気分転換になります?」


現に私達は、神崎渚ファンクラブ(仮)の会員様方に見られたら問答無用でギロチン送りにされてしまいそうなほど一緒に過ごしている。

そんな私と遊びに行ったところで、勉強しているときと大差ないのではないか。


というか、他に遊ぶ相手はいないの?


教室でクラスメートに囲まれて笑っている貴方は幻だったの?


考え過ぎて頭が痛くなってきた私に対して渚は、

「勉強するわけじゃないしないんだから、別にいいじゃん」

と拗ねている。