久遠の果てで、あの約束を。


「へー、俺に内緒でそんなコトしてたんだ」



体育館倉庫の引き戸が、大胆な音を立てて開いた。


その場にいた全員の視線が、彼に集中する。


「かっ……」

神崎くん。


その続きが言えないまま怒りで赤くなっていた顔を青や白に模様替えさせる女の子達。

好意を寄せる人に自分の悪行を見られたらこうなるのは当然といえば当然か。ちょっと気の毒で同情する。


「え、あ、ちょ……」

がたがたと震えている少女らには一瞥もくれずに、私の手を掴んで体育館倉庫から出る渚。

ひさしの下で手が解放され、同時に肩をがしっと掴まれた。


「大丈夫っ? 怪我とかしてない!?」


「う、うん……」


なんというか、驚いた。


まさかいきなり、そんなことを訊かれるなんて思わなかったから。


さっき女子達をあれだけ怯えさせていた面影は今は何処にもなくて、代わりに焦りと不安が瞳の奥て混ざり合う。



……心配して、くれてるんだ。



「本当? よかったぁ」


渚が心底安心したように息を吐く。

私なんかを心配してくれたことが嬉しくて、さっきの恐怖は何処へやら、すっかり上機嫌になってしまった。

もう雨は止んでいて、分厚い雲の隙間をかいくぐった光に照らされた道を歩く。空には透き通った七色の虹がかかっていた。