「一年B組の教室って、どの辺にあるかわかります?」


実年齢は知らないけれどなんとなく年上っぽく見えたので、念の為敬語を使っておく。


だから失礼はなかったはずなのに、その男子生徒は驚いたように目を瞬かせた。


「どうしましたか?」

「……ううん、なんでもない。B組だよね? えっと確か……、そこの階段上がって右だったと思う。多分」

多分て。

さっきの態度も含め色々と言いたいことはあったけれど、時間も時間なのでぐっと堪えた。

「ありがとうございます」


ぺこりと頭を下げて背を向けると、「待ってよ」と後ろから引き留める声がした。無視をするのは感じが悪いので、一応足を止めて振り返る。



「俺もB組だから一緒に行こう?」


特に断る理由もなかったので頷いた。というか、この人私と同い年なんだ。敬語、使わなきゃよかった。さりげなく足元を見てみると、確かに上履きのラインは私と同じ赤色だ。