久遠の果てで、あの約束を。

女子達が噂していた通り、彼のプレーは見事だった。


相手チームのディフェンスを軽々とかわして何本もシュートを決めていく渚は、間違いなくチーム内で一番活躍している。

ちらりと横に目を向けると、大半の女子が頬を薔薇色に染めていた。また一本、シュートが決まる。声のない黄色い歓声が、湿気の多い空気の中に溶け込んだ。


そうしているうちに男子の試合が終わって、ようやく観客の頬色が元に戻った。

「ねぇ、バスケとかして大丈夫なの?」

女子の視線が痛かったけれど、どうしても気になって汗を拭う渚に駆け寄る。


「んー、今のところ大丈夫」

「そっか。ならよかった」

病気持ちの人は体育の授業を見学するものだと勝手に思い込んでいたけれど、案外そうでもないらしい。私の偏見だったようだ。


「なに? 心配してくれてたの?」


にやにやと顔を覗き込まれて、反射的に俯いてしまう。心なしか顔が熱い。

女子の皆様の怒りを買ってしまうから、誤解されるようなことはしないでくれますかね。あ、でも最初に声かけたのは私か。ごめん渚。


「別に、ただ気になっただけ」

多分いやきっと気のせいだけど、数メートル先で火事が怒っていらっしゃる。脳内で火災報知器がけたたましい音を響かせる。


火の元はおそらく、私に対する嫉妬の炎。これ外の雨で消せるかな。消せますように。